【イベント参加記録】日本のお金をアップデートする。#01 -お金の価値はどう変わる?-
はじめに
こちらのイベントに行ってきました。 ここ最近行った同種のイベントの中で、間違いなく一番楽しくて収穫も多いものでした。 ちょうどブログを始めようと思っていたタイミングで意図せず絶好のネタを得てしまったので、記事にしてみました。 今回は、トークセッションのまとめと記録を中心に書きます。
登壇者
イベントの様子
岡部さんの進行に合わせて、お三方が各々の持論を絡め合いつつ展開してくれました。
ざっくりまとめ
お三方とも共通認識であったのが、これから数年以内の間にお金の形は大きく変わっていき、「なめらかな社会」が来るということ。 そのために、メルペイがまず目指すのがお金の出し入れ・使用をなめらかにすること、ヘイが目指すのがユーザよりも売り手側を中心になめらかにすること、バンクが目指すのが少額の資金調達からなめらかにするということでした。 そして、その「なめらかな社会」のために以下のようなテーマが上がりました。
- 新しい「信用」の形
- 「既存の金融サービス」との付き合い(共存してアップデートか、破壊的創造か)
- お金以外の新しい「価値」
- お金と「テクノロジー」
特に印象に残った話
新しい形の信用を創造して、なめらかな社会をつくる(佐藤さん、青柳さん)
- 信用(=支払い能力の保証)は個人に対してつくべきなのにそれを保証する術がないから、現状中央銀行が日本円を通して信用を付与している(佐藤さん)
- これからは、信用を個人の信用を根拠にして、買い物ができるような社会があるべき(佐藤さん)
- 現状の信用の根拠は、クレカの支払い状況など限られているが、信用の根拠となりうるデータ資源はたくさんある(青柳さん)
信用を無視して、なめらかな社会をつくる(光本さん)
佐藤さん、青柳さんが「信用」をなめらかな社会のキーワードに上げるのに対して、光本さんは、その信用を無視することで、なめらかな社会を実現するとしました。 その根拠は、「100人いても、悪い奴はその中の2,3人だけ」という考え方。そして、それを体現しているのがCASHですね。CASHは、仕組み上借り逃げされかねない仕組みとなっていますが、それでもサービスとして成立しており、性善説の体現ですね。
「信用」は個人に対してつくべきにもかかわらず、現状の「信用」の仕組みではそれができない。そこで、中央銀行が発行した法定通貨の所有量が個人の「信用」の物差しとなっている。(佐藤さん)
お金はすべての人に関わるものなのに、既存の金融機関は「遠くて冷たくて固い」。その思いが企業のきっかけの一つ。(光本さん)
官公庁や大手金融機関を訪問するときに、スーツを着ていくかアロハを着ていくか
トークセッション後の懇親会で聞いた話が混じっていますが、今回のイベントの良さを表す象徴的なエピソードでした。官公庁や大手金融機関を訪問するとき、青柳さんはスーツを着て(必要なら訪問先のイメージカラーのネクタイも締めて)いき、光本さんはいつものアロハを着ていったことがあるそうです。青柳さんは、自分がスーツを着ていくくらいで話がスムーズになるなら着ていくという考え方、それに対して光本さんは新しい社会を作るからこそそのまま普段来ているアロハを着ていくそうです。どちらもそれぞれの筋を通した結果であり、今回のイベントはこのような登壇者のスタンスの違いが良い意味で出ていました。
その他トークメモ
1. 5年後のお金の形
現状では、お金の出し入れの手間がその分の時間価値を超えてしまっていることが多い。それをなめらかにする(青柳さん)
現状では、都内店舗の3分の2がまだ都内でキャッシュレス。そこを変えていく。(佐藤さん)
たかが「1,2万円で何ができる」と言われることはあるが、少額のお金でも必要としている人はたくさんいる。(光本さん)
2. お金と生活を変えるテクノロジー
Fintechとは、二種類に分類できて、 既存の伝統的な金融サービスをテクノロジーによってアップデートするものと、外部から新しい形のサービスを提供するものがある(佐藤さん)
モノに価値が付くプラットフォームがどんどん増えていく(光本さん)
法律や正統なサービスに迎合しながらやっていくのは大変。現状の障壁をいかにスキップして、スタンダードを作っていくかが課題。(佐藤さん)
Fintechというと新しいテクノロジーがセットでイメージされるが、必ずしも最新テクノロジーは関係ないのではないか(岡部さん)
QRコードでの支払いみたいなものは、手間が少ない分「なめらか」だけど、実はそんなに現金と大差ない(青柳さん)
お金に関するサービスは、金融期間サイド発のものとテック企業サイド発のものがある。金融期間とそれを請けるSI企業がまだまだ金融に関するテクノロジーを抱えているが、そのような金融機関サイドはデザイン・UXに関する視点が足りない。(青柳さん)
3. いけている(一緒に働きたい)エンジニアとは
お金がなめらかになった後の社会に対するわくわくを持っている人(青柳さん)
外に出ていって知見を持って帰ってきてくれる人(青柳さん)
プロダクトドリブンでやるからこそ、プロダクトのコアターゲットを意識して彼らのためにサービスを作れる人(=プロダクトを作るプロセスを全て踏める人)(佐藤さん)
固定観念を取り外してものを考えられる人(佐藤さん)
世界を変えたい人 将来のスタンダードをつくりたい人(光本さん)
Q1: 法律のグレーゾーンに対してのアプローチはどうしていくのか?
※光本さんの回答が面白かったのですが、オフレコ感あるので書きません笑
- 政策移行として、人・会社で集まって提案していくと意外とうまくいく(青柳さん)
Q2: 「新しい信用」の下で不幸になる(その人たちにとって社会がむしろなめらかでなくなる)人たちをどうやって救うか?(ちなみにこれ私がした質問です笑)
損なわれた信用をいかに修復できるか、上げるための行動をガイドする ガイドはサービスじゃなくボランティアでも良い(青柳さん)
信用が壊れるほど貸さないようにコントロールする(青柳さん)
お金でしか返せないから不幸になるのではないか。モノに価値がついていく時代だからこそ、お金以外の手段で返せるようにしていく(光本さん)
(光本さんの話を受けて)雇用を生むサービスも同時に提供する(青柳さん)
さいごに
以上のように、示唆に富む話がたくさんありました。個人的には、光本さんの既存の金融サービスへの「冷たさ」という課題意識に基づく、性善説ベースの考え方が一番惹かれました。 またこれをテーマに記事を書きたいと思います。